資格試験

 「資格をたくさんお持ちですね」と、ときどき言われます。40歳頃から独立を目指していたので、その時々の仕事に関連する資格をコツコツ勉強・受験しておりました。資格を持てば独立できるなどと考えるのは愚かですが、少しは役に立つだろうと考えていたのです。独立に踏み切ったのは必要な資格が手に入ったからではなく、「斎藤をよこしてくれ」というクライアントからのご指名のリクエストが続くようになったからです。
 独立後、資格は営業や受注にだけは少しは役立っているかもしれないと感じますので、資格取得は無駄ではありませんでしたが、一番役立っているのは資格取得のための勉強を通じて、知識に穴がなく、頭の中で整理されたことではないかと感じます。

資格試験受験の原点

 私の資格試験受験の原点は30歳のときに取得した中型限定自動二輪免許に遡ります。もっと若い時に二輪免許を取得していれば「中型」という限定など付かなかったのですが、当時暴走族が問題になっていて、いわゆる「ナナハン免許」といわれていた大型自動二輪免許が教習所で取得できなくなっておりました。私はどうしてもナナハンに乗りたかったので、この限定解除に挑戦することにしたのです。
 「中型」という限定を解除する当時唯一の方法は、試験場で直接実技試験を受けて合格することでした。この試験の合格率は2~3%といわれており、岡山で受験した6回中、3回は「合格者なし」でした。その後、仕事の関係で東京に戻り、府中の試験場で受験再開となったのですが、同時に試験場近くの練習場で実技を教えてもらうことにしました。
 結局、私は合格までの受験回数が通算13回にもなってしまったのですが、重要なのは、練習場でまじめに練習に取り組んでいた人たちの多くが、女性ライダーを含めてこの難関試験に合格していったという事実です。私はこの試験に合格できたおかげで、合格率の低さにひるむことなく、まじめに準備さえすれば、どんな難関試験でも門は開かれると考えられるようになりました。

情報処理技術者試験

 私は造船技術者として社会に第一歩を踏み出しました。ある時、ある組織向けにその組織が所有する船舶のデータベースを構築する仕事を担当しました。クライアント側担当者との打合せが何回かあったのですが、当時の第二種情報処理技術者の資格を有するこの担当者が、上司と一緒になって、何かにつけこの資格のことをひけらかすのです。「それでは私も同じ資格を取得してやろう」と考え、門外漢ではあったこの情報処理分野の試験を受けることにしました。
 私にとって、これが仕事に関係する初めての資格試験でした。このときの仕事・勉強がきっかけで、情報処理分野に大変興味を持ち、結局、私自身の専門を変えてしまうことになるとは思いもしませんでした(造船工学 → 情報工学)。
 情報処理技術者試験は半年に一回実施されております。試験は情報処理の各分野に分かれているのですが、分野が異なっても求められている知識に重複する部分が少なからずあります。この試験は携わっている仕事に関連する分野を手始めに、連続して周辺分野の試験に挑戦していくことが、効率よく合格していく秘訣です。一度勉強したことを忘れる前に、次の分野の試験を受けてしまうのです。

論文対策

 情報処理技術者試験の中には論文を書かなければならないものがあります。これを苦手にしている方も少なくないようですが、私はあまり苦になりませんでした。多くの問題が噴出したプロジェクトを経験していたからです。論文試験でその問題の題意に当てはまりそうな出来事をこのプロジェクトから拾い出して、記述すればOKだったからです。
 論文は単なる作文とは異なります。自分の過去の経験から問題になったプロジェクトを思い出しましょう。どのようなことが問題となったのか、その問題に対して自分はどのような解決策を考え、実践したのか。可能であれば、複数の解決策を考え、どういう理由でそのうちの一つを解決策として採用したのか、を記述できれば理想的です。「~が問題となった。」 「~が原因でこの問題が生じていることが判明した。」 「そこで私は~(解決策)を実施し、なんとかこの問題を乗り切ることができた。」 といった言葉がちりばめられていればOKです。

時間のない時の受験対策

 私の情報処理技術者試験の受験対策は、解説の充実している問題集を入手して、問題を解いては解説を読むことです。解説を読んでも良く理解できない場合は参考書の関連部分を読んで理解します。純粋に勉強であればよろしいのですが、受験のためであるなら、参考書を頭から読んで受験するのは、時間効率がよろしくありません。問題を解く際に間違えた問題には印をつけておき、2回目は間違えた問題だけを同じように解いていきます。間違える問題がなくなったら、確実に合格レベルです。
 仕事の関係で時間に余裕がなく、上記のような勉強方法がとれないこともありました。その時は、問題集の残してしまった部分は、問題すら読まず、解答(解説)だけを読んで試験に臨んだこともあります。普段の仕事でも調べなければ(勉強しなければ)ならないこともあるわけですから、その時にインプットした知識を信じて、情報処理分野の知識が一定レベルに達していれば、このような方法でも合格してしまいます。

目次暗記の勧め

 資格試験に合格するためのヒントを書き連ねてきましたが、資格試験受験だけが勉強の目的ではありません。ある分野の勉強をする際、参考書を求めると思いますが、参考書を購入する際はその本の「目次」と「まえがき」だけは書店で確認しましょう。「まえがき」には想定している読者について書かれていることが多いですし、「目次」は著者が考えているその分野の全体像(フレームワーク)が表われています。本は「目次」と「まえがき」に納得してから購入します。
 その「目次」ですが、まずはもっともハイレベルな、たとえば「章」を拾い読みします。これがもっともハイレベルな全体像です。次に各「章」の内容を見ていきます。この時も次のレベルの、たとえば「節」を拾い読みします。こうして本に書かれている全体像を頭に入れ、本文を読みますと内容理解に効果的です。本文を読むときも章建てが変わる度に目次を確認し、全体像における位置づけを意識しながら読み進めましょう。
 全体を読み終わって内容を理解し納得できたら、目次を暗記してしまいます。そうすると頭の中にその分野の引き出しができて、必要な知識を必要な時に漏れなく取り出しやすくなります。暗記する目次は参考書のとおりである必要はありません。特に資格予備校のテキストの目次は、初学者が順を追って理解できるように並べられており、これはこれで合理的ですが、全てを理解した後で暗記する目次としては相応しくありません。自分で納得のいく体系に並べ替えてしまいましょう。私は目次を暗記する過程で、はっと気付くことや体系的な理解が深まることが少なくありませんでした。目次を暗記し、目次の各項目の内容を自分の言葉で説明できるようになりましょう。総復習も参考書等の資料なしに頭の中だけでできるようになります。目次の暗記はあるテーマや具体的ケースについて自分の意見の論述が求められるような論文試験に大変有効です。参考書の内容を理解すると択一式試験に合格できるようになります。目次を覚えると論述式試験に合格できるようになります。

独立後の資格取得

 独立後も毎年1つは資格試験受験・合格を目標にしております。年齢を重ねると脳力が衰えてくるものですが、この脳の衰えを防止することと、まだ衰えていないことを証明することが目的になってきているような状況です。
 最近私が受験している試験を顧みますと、仕事に密着しているものばかりですが、その種類もIT系から徐々に離れ、業務系の知識が求められる試験が多くなっています。これは私自身の興味分野も変化してきているからです。ITコーディネータの理念である経営とITの橋渡し役(私の知人の中にシステム・エンジニア出身の公認会計士が2人おり、彼らはこれが可能と感じますが、経営とITの両面に精通した本当のプロは実は多くはいません)、あるいは専門分野を2つ持つ人材であるΠ(パイ)型人間を極めたいと考えております。


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